FC2ブログ
図書館のつぶやき

学生アルバイト含め図書館スタッフ約10名が交替で担当する本の紹介コラム、企画展示や各種イベントのお知らせなど、もろもろのご案内を掲載しています。

図書館スタッフ

北海道教育大学附属図書館釧路館のつぶやきです。

カレンダー
11 | 2018/12 | 01
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
としょつぶの本棚

釧路館の新着本などを並べています。

ブログ内検索
FC2カウンター
月別アーカイブ

 
2017年09月19日(火)

夏休みが始まって一ヶ月

皆様こんにちは!アルバイトのM.N.です。
夏休みが始まって一ヶ月、あっという間に日々が過ぎていきます。
気付けばもう夏は終わりを迎えそうですね。

私はというと、何をすることもなく暇な時間を過ごしています。
「こんな夏でいいのか!」と自分を叱りつけたいのは山々なのですが、
生憎そんな気力も体力も残っていないのが現状です。情けない・・・。
しかし!だからこそ!!
そんな暇な時間を活用して国研らしく読書をしようじゃないか!!!と自分を奮い立たせ、
なんとか某コーチ◯ンフォーに足を伸ばしました。

江戸川1

そこで出会ったのは、新潮文庫で新しい装丁となった、『江戸川乱歩傑作選』でした。
こういった文学にあまり触れてこなかったな、という思いと、
この装丁めっちゃカッコいい!という二つの思いから、即購入し、さっそく読み始めました。

この短編集の中でとりわけ印象に残ったのは、「心理試験」と「人間椅子」の二作品です。

「心理試験」は、頭脳明晰な苦学生、蕗屋清一郎が主人公です。
学はあるが金はない、そんな蕗屋は、親友である齋藤勇から、
彼の下宿先の家主である老婆が大金を貯めていることを聞きます。

あんな老婆が大金を持っているより、未来のある自分が金を手に入れるべきだという考えに至り、
老婆を殺し大金を奪う計画を企てます。
(「選ばれた非凡人は、新たな世の中の成長のためなら、社会道徳を踏み外す権利を持つ」、
さながらドストエフスキーの罪と罰みたいな犯罪論理ですね。)

自分が疑われることのない、完璧な計画、完璧な犯罪。
しかし、完璧であるが故、彼は大きなミスを犯してしまうのです。

最初は読者である私も「これは完全犯罪だ!」と自身を持って言えたのですが、
徐々に追い詰められていく蕗屋とシンクロしてこっちまで焦ってくる、ハラハラドキドキの展開が繰り広げられます。

本来は悪であるはずの犯人に同調・同情してしまうのは何とも言えないですが、
乱歩の作品は心理描写が素晴らしく、読み手である私たちの身に切迫する緊張感がたまらないです。
ある意味背筋がヒヤッとして涼しくなれますね!笑

また、この作品には名探偵の明智小五郎も登場します。
名前だけは知っている方も多いかと思いますが、どんな小さなトリックでも見逃さない彼の名探偵ぶりは圧巻です。

続いて「人間椅子」。
名前からして不穏な雰囲気ですが、安心して下さい。
それ以上に不気味で奇怪な作品です。

外交官の妻であり、女性作家でもある佳子の元に、一通のファンレターが届きます。
それはある男の懺悔が書き綴られたものでした。

容姿は醜いが精巧な椅子を作ることで有名な「私」は、
ちょっとした思いつきから椅子に空洞を作って入り込むことを企てます。
その思いつきはいよいよ形となるのですが、そのまま外国人専用ホテルの客間へ私ごと運ばれてしまいます。
様々な人間が自分の上に座る感触に快感を得る私。

あるときは少女に恋をし、あるときは外国人の屈強な体つきに驚きました。
しかし、次第に私は言葉が通じない外国人ではなく、日本人の女性の感触も味わいたいと思うようになります。

そしてその頃、ホテルのオーナーが変わり、私の入っている椅子は売りに出され、
やっと日本人の女性の感触を味わえるのだと胸を躍らせるのですが・・・。
視覚的ではなく、感覚的な描写を文字でこれだけ表現できるものなのかと驚かされました。
さながら映像を見ているような感覚に陥ります。

また、最後の1ページで驚愕のラストが待ち構えています。
所詮は私も乱歩の手のひらの上で踊らされていたのだと、良い意味で意気消沈させられました。
こういったどんでん返しも乱歩の作品ならではでしょう。

江戸川2

新潮社文庫版の傑作選は残念ながら当図書館には置いていません。
しかし、今回ご紹介した二編は光文社文庫版の『屋根裏の散歩者』に収録されていて、
当図書館にも蔵書されています。
そちらの方を手にとって頂ければ幸いです。
光文社文庫版には乱歩本人による当時のあとがきも併せて掲載されているので、
作品をより深く味わえること間違いなしです。

少し長くなってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。
大好きな作品に対してはどうしても熱くなってしまうものです。
乱歩の魅力が少しでも伝われば幸いです。

夏休みは後少し、長いようであっという間です。
だからこそ空いている時間を活用して様々な文学に触れてみては如何でしょうか。