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図書館のつぶやき

学生アルバイト含め図書館スタッフ約10名が交替で担当する本の紹介コラム、企画展示や各種イベントのお知らせなど、もろもろのご案内を掲載しています。

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北海道教育大学附属図書館釧路館のつぶやきです。

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2017年02月20日(月)

東インド会社とアジアの海賊

私、いちおう歴史の教員なので、たまには歴史モノから一冊挙げてみましょう。
 
東インド会社とアジアの海賊

東洋文庫編『東インド会社とアジアの海賊』というこの本、もともとは東洋文庫ミュージアムが2012年に開催した「東インド会社とアジアの海賊」という企画展示とシンポジウムから生まれたものです(「あとがき」)。東洋文庫は東京の駒込にある、アジアに関する膨大かつ貴重な図書を多数有する世界でも指折りの図書館であり、また研究機関でもあります。つい先日、NHKの「探検バクモン」という番組でも紹介されていましたよ(2017年1月25日放送)。羽田正氏の総論以下、8本の論文が載っており、基本的には学術的な本ですけれども、なるべく平易にわかりやすくを心がけて書かれています。

東インド会社は、小学校の歴史教科書から出てきますので、聞いたことがあるでしょう。イギリスのものやオランダのものなどがありまして、それぞれに特徴や歴史的な意義があります。貿易の会社ですから、わたしたちが現代において知っている総合商社的なイメージを思い浮かべ、先進的なヨーロッパ人がアジアにやって来て“紳士的に”商品の取引をしたのだろうと想像します。ところが、羽田正氏の総論によると、オランダ東インド会社は、武力に物を言わせてアジア諸地域の秩序を破壊し、略奪行為を平然と行っていた海賊みたいな存在であったのだそうです。彼らの海賊行為は幕府でも知っていたようで、1618年にオランダ人ヤン・ヨーステン(東京・八重洲の地名の由来になった人)が老中土井利勝に進上品を持って行ったところ土井が「これは盗品ではないのか?」と尋ねたそうです(26ページ)。いや~、彼らの外道ぶりは有名だったのですね。

本書は、第1部西南アジア海域、第2部東南アジア海域、第3部東アジア海域、によって構成され、特に第3部は5本の論文が載っていて本書の主要な部分を占めています。日中にまたがる話が多いので、我ら日本人読者にとっていちばんなじみ深くもありましょう。総じて、海賊とよばれる人々の活動の具体的な様子がリアルに紹介され、従来の海賊イメージがひっくり返されること、請け合いです。本書でも触れられている漫画「One Piece」や映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』に見える海賊像と、実際の海賊とはやはりずいぶんと違うものであり、そもそも海賊(現代日本語です)という言葉で指し示される人たちはどういう人たちであるのか、ということこそが問題であるのですね。単なる無法な悪党で済むものではない、しかしもちろん正義の味方でもない、「24時間職業海賊」ばかりがいるとは限らず、一般民間人がある状況下においては海賊行為に走る、とか、ま、いろいろなケースがありました。そもそも「海の上の掟」というべきルールがあったかなかったか、あったとして東西で共通か、といったことが問題です。その辺については、山田吉彦『海賊の掟』(新潮新書、2006年)が一般的な説明をしています(本書ほどのインパクトはありませんが)。

タイトルには「海賊」の語がありますが、内容的には貿易が問題の場合もありますし、さらに海外との交流という大きなテーマの話でもあります。人間の活動は、何と多様で何とダイナミックなものだったのでしょうか!あらためて驚きますね。そして歴史学の最新成果もまた大変に豊かなものであります。従来の思い込みがぶっ飛ばされるようなこういう最新成果、実はいろいろ出ております。おいおい紹介して参りましょう。
(釧路館長 竹内康浩)