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図書館のつぶやき

学生アルバイト含め図書館スタッフ約10名が交替で担当する本の紹介コラム、企画展示や各種イベントのお知らせなど、もろもろのご案内を掲載しています。

図書館スタッフ

北海道教育大学附属図書館釧路館のつぶやきです。

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2016年11月07日(月)

本紹介:『生き心地の良い街―この自殺率の低さには理由がある―』

これは、著者が執筆した博士論文を一般の人にも分かりやすく紹介した本です。
と書くと、何やら難しい内容を想像してしまうかもしれませんが、これが拍子抜けするほどやさしくて、びっくりするほど面白い。

同じように過酷な経験をした人たちの中にも、徐々に心の傷が癒されている人と、いつまでもトラウマに苛まれ続けている人の両方がいる。(略)その違いの背景に、彼らが戦後もどって行った故郷やコミュニティの規範、隣人たちの価値観が大きくかかわっているということに思い至った。

このような動機から研究を始め、自殺率が極めて低い徳島県海部町に目を付け、そのコミュニティの中に飛び込み、話を聞き、仮説を立てながら、以下の5つの「自殺予防因子」を明らかにしていきます。

1.いろんな人がいてもよい、いろんな人がいたほうがよい
2.人物本位主義をつらぬく
3.どうせ自分なんて、と考えない
4.「病」は市に出せ
5.ゆるやかにつながる

著者はなぜこの5つを自殺予防因子と考えたのでしょうか?
それは、実際にこの本を読んでみてください。「赤い羽根募金が集まらないわけ」「祭の準備中に少年が口にした言葉」「知り合いが鬱になった時の反応」といった印象的なエピソードの数々が、あなたを驚かせたり、笑わせたり、感心させたりしながら、次第に海部町の秘密を明らかにしていくことでしょう。

飄々としているようで抜け目のない、思わず「やるな、おぬし」と声をかけたくなるような、海部町とはそういうコミュニティである。他地域の住民たちをして、「海部町には、“賢い”人が多い」と言わしめるゆえんであろう。

このようなユーモア溢れる文章もまた、この本の魅力の一つです。おかげで、自殺という言葉の持つ暗い影をほとんど感じさせずに最後まで読み通すことができました。

「おもしろくて、ためになる」というのは、この本を出版した講談社の有名なキャッチコピーですが、まさにこの本のためにあるような、そんな素晴らしい本です。
(学術情報グループ・前田)

生き心地によい町

『生き心地のよい町』/岡檀著(講談社)