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図書館のつぶやき

学生アルバイト含め図書館スタッフ約10名が交替で担当する本の紹介コラム、企画展示や各種イベントのお知らせなど、もろもろのご案内を掲載しています。

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北海道教育大学附属図書館釧路館のつぶやきです。

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2016年04月28日(木)

『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』 カーマイン・ガロ著

驚異のプレゼン

『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』
カーマイン・ガロ著、井口耕二翻訳、外村仁解説
日経BP社 2010年

アップル社を立ち上げ、コンピューター業界の革命児にしてビジネス界の風雲児と称すべきスティーブ・ジョブズ。2011年に56歳という若さで亡くなってしまい、今後の一層の活躍が期待されただけに本当に残念であります。ジョブズは、着想の豊かさと事業推進への情熱においても人なみはずれていましたが、それ以上に新製品の発表の場で存分に発揮されたプレゼンテーションの見事さこそ抜群でした(You Tubeで見れます)。本書は、基本的にはジョブズのプレゼンの特徴と秘訣を挙げ、誰もがそれを学んでいけるように法則化したものです。プレゼンには内容、方法、表現の三つが重要ですが、なかなかどうしてうまくはいきません。そのためのコツを、著者のガロは18の法則として大変巧みにまとめあげています。表現についてはプレゼンターの個性も関係しますので、誰もがジョブズのまねができるわけでもなく(彼は見事な役者でありました)、またまねではいけないでしょう。しかし、内容と方法については本書が提示する法則は誰でも模範とし応用できるものです。特に事前構想におけるまとめ方、プレゼンの際の文字と図のモデルなどは、大いに参考になります。無論、ここでのプレゼンは10分前後の売り込みのための短いものが前提ですから、授業にそのまま応用はできません。それでも参考となる提言が多数あります。

ここまでは、本書のビジネス向け実用書としての特徴です。以上でも充分有用ですが、それだけでは本書を薦める気にはなりません。実は本書にはもう一つ、魅力的な部分があるのです。それは各業界で成功した人たちの「金言」が数多く紹介されていることです。例をあげましょう。ホームレスから努力して株のセールストレーダーになり大金持ちになったクリス・ガードナーの言葉。「どうしてそこまで頑張り続けられたと思いますか」との問いに、彼は「大好きなこと、どうしてもやりたいと思うことが見つかれば、ああもう1日、それができると太陽が昇るのが待ち遠しくなりますよ」と答えたそうです(66~67ページ)。努力や頑張りはただの苦行ではないのですね。好きなこと、やりたいことの発見やそれとの出会いの大切さ、人生の意味にもつながるよい言葉ではないでしょうか。また、多くの優秀なビジネスマンへの調査の結果、「偉大なリーダーとは、人々をよりよい未来へといざなう人である」との結論が紹介されています(72ページ)。この言葉自体なるほどと思わせますが、さらにこれを応用して言い換えて、「良い教師とは、子どもたちによりよい未来を示すことができる人である」としてはどうでしょうか。偉大なリーダーのように直接「いざなう」ことはできなくても、そして漠然としていても、「よりよい未来」があることを、そして自分次第でそれにたどりつけることを子どもたちに示すことができれば、教師の役割として何とすばらしいことでしょうか。こうした含蓄のある言葉が豊富に見られることが本書の大きな魅力であり、私にとってはむしろこちらの方が重要です。受け売りや模倣ではなく、本の内容を自分自身でとらえ直し実際に活かしていく、そういう読書体験のためにもよい手がかりとなる本であると思います。お薦めしましょう。

(附属図書館釧路館長 竹内康浩)