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ラスト、としょつぶ

金 文京
『水戸黄門「漫遊」考』
講談社学術文庫、2012年(原著は新人物往来社、1999年)


『水戸黄門「漫遊」考』


 30代以上の人ならテレビの時代劇でおなじみ、水戸黄門が助さん格さんらを伴って全国を歩き、
悪い奴らを懲らしめるお話を取り上げた本です。

時代劇『水戸黄門』は、1969年から2011年まで続いた恐るべき長寿番組で、
なぜかボレロのリズムを使ったインパクト大のテーマソングも含め、多くの日本人が知っているものでございましょう。

水戸黄門、お名前でいえば徳川光圀(1628~1700)が実際には諸国を回ったことはなく、
時代劇の話はあくまでもフィクションだ、というのはテレビドラマの熱烈な視聴者でもだいたいご存じのとおりでありましょう。

歴史的な立場からはもちろんそれでバッサリ斬って終わっていいわけですが、それじゃあ面白くない。

いったいどうしてこんな話がつくられたのかを追究すると、いろいろとおもしろいことが見えてくるのです。

水戸黄門の話にはいくつか特徴があります。
まず、実際には高い身分で権力を持った人間が正体を隠して行動していること、
広い地域にわたって活動すること、そして、ストーリーとしては悪党退治であること、です。

こうした特徴を持った水戸黄門の諸国漫遊話について考えてみると、実は背後に広がる世界はとても広く、
国際的な要素を持ったものでさえあることが、この本には豊富な例を引きつつ述べられております。

高い身分の人が隠密行動をとるというのは、日本ならば古く、鎌倉時代に北条時頼が諸国を歩いたという伝説があります。
佐野で貧しい武士の心のこもったもてなしを受けたという「鉢の木」の話は有名です。

また、本書では、俳人の松尾芭蕉が実は幕府のスパイであったという説にも触れます。
『奥の細道』はまさにそのスパイ活動記録というわけですな。海外では朝鮮半島に似た例があります。
王の命を受けて全国を監察して回った暗行御史なる役職があり、まさに水戸黄門同様、地方の悪党を退治します。
この暗行御史ですが、日本で漫画になっているんですね、びっくりしました(月刊サンデーGX掲載。「新暗行御史」)。
これはアニメにもなっているそうです。但し、「暗行御史」を「あんぎょうおんし」とふりがなをふっているのはいかんなあ。
御史は中国に紀元前から存在する役人監察の職名で、うちらの業界では「ぎょし」と呼んでおります。

韓国ではもちろんドラマになっていまして(「暗行御史(アメンオサ) パク・ムンス」)、
例によってイケメンと美女のドラマのようですねえ。

中国では、本書では触れていませんけど、清朝の康熙帝(1654~1722。在位1661~1722)が地方をめぐって悪い役人を懲らしめる話がありまして、これもドラマになっていて「康熙王朝」というタイトルです。
もちろんフィクションです。

そこまでいかなくても、名裁判官として名高い北宋時代の包拯(ほうじょう。1000~1062)が、
正体を隠して自ら捜査に乗り出し事件を解決するという話もあります。
ついでにいうとこれもドラマになっていて「開封府」というタイトルで、スカパーで再放送の真っ最中(2019年3月現在)。
この包拯については本書でも詳しく触れていまして、特に彼が実際には高い身分であることを証明する剣とメダルを持っているというのは、水戸黄門にとっては印籠に当たるものですから、プロットの共通点に驚きます。

ま、そんなこんなで、水戸黄門の諸国漫遊話と似た話がアジアにいろいろあることが豊富な実例によって語られていきまして、
そこはまことにおもしろい。
そしてまた興味深いのは、この水戸黄門の諸国漫遊話は明治以降に急速に広まり、また内容が膨れ上がってゆくことです。
つまり、比較的新しい「創作」なのですね。そのことが詳しく追究されていまして、これまた大変面白い。
 
本書は、基本的には比較文学・比較文化の立場から、多くの資料を博捜してこのテーマに迫ったものですが、
紹介されるお話の面白さと相俟って、普通の読み物としても大いに楽しめます。

高水準の読み物ですね。お薦めしましょう。

なお、主役の水戸光圀が実際にはどのような人であったのかについては、磯田道史『殿様の通信簿』(新潮文庫)をご覧ください。この本もまた傑作。
江戸初期の著名な大名たちについての“実録”に基づいた紹介で、忠臣蔵の浅野内匠頭なんかはみごとなバカ殿評価。
歴史の見方が変わるかも、ってなところですねえ。
 
以上、文は竹内康浩。釧路校図書館館長としての最後のお仕事です。
いつも図書館で働いている老若男女のみなさま、まことにご苦労様でした~。

ロマンス小説の七日間

図書館職員の天野です。

 図書館2F視聴覚資料コーナーで魅惑のオペラシリーズを紹介していることをご存じでしょうか?
貸出可能な資料なので、多くの方に利用していただきたいので、POPにも力を入れて紹介しております。 
 
現在、ご紹介しているものはこちら!

          don giovanni booklog

こうなると
図書館のつぶやきでご紹介する本は
村上春樹著 
『騎士団長殺し』!!

しかし、釧路館には所蔵がありません…
そこで、
騎士つながりで(苦肉の策)
ご紹介するのはこちら!

            romannsu

表紙のイラストのみで選びました。

三浦しをん著 『ロマンス小説の七日間』
何も考えず、楽に読める恋愛小説です。
むしろ、考えるとモヤモヤしてしまうかも、

あらすじ
ロマンス小説の翻訳が仕事の28歳独身女性が主人公です。
同棲中の彼氏が突然、仕事をやめて帰宅。心乱されながら、中世騎士と女領主との恋物語を翻訳します。
彼氏は仕事を辞めて何をするのかと聞けば、「ネパールへ行く」とのこと、
「なにそれ!!聞いたことないけど!」
心乱れるまま翻訳仕事を続けますが、心の乱れが翻訳中のロマンス小説に影響し始めます。
締め切りが迫る!
ロマンス小説の捏造は止まらない!二人の関係と翻訳小説の行方は‥

この捏造されてゆくロマンス小説は
三浦しをんらしく腐女子心をくすぐる展開になっています。
 
それにしても、
この小説の彼氏、料理が上手で、運動神経が良く、笑顔が素敵で、仕事が続かない。

オペラに多く登場する男性は魅力的だが、自分勝手というの特徴があるのですが、
歌わないだけで、この小説の彼氏も同じじゃないの?
などと、モヤモヤしますが、2時間ほどで読み終わる小説です。
気軽にお手にとってみてください。

「告白」

こんにちは!
アルバイト2年目のY.Kです。

今回私が紹介する本は、「告白」 (湊かなえ 著) です。

告白

我が子を自分の教えている学校で亡くした女性教師が
終業式後のホームルームで犯人である少年を指し示します。
そして物語は、モノローグ形式で犯人や友人、犯人の家族たちの「告白」によって語られ、
事件の真相が徐々に明らかになっていきます。
様々な視点から見る事件の真相や人間の恐ろしさ、淡々と復讐をしていく執念にきっとゾクゾクするでしょう。



図書館にありますので、ぜひ一度手にとって読んでみてはいかがでしょうか??

乙一『暗黒童話』

お久しぶりです。アルバイトのM.Nです。暖かい日が続いたと思いきや、度重なる吹雪でめっきり冬らしくなってきましたね。
雪が積もるたびに学校へ向かう足取りが重たくなってきました。

もとから重たいとか、そういうわけではないです。

決して。断じて。

去年もなんだか同じようなことを言っていた気がします。デジャブですね。
デジャブと言えば思い出す本が一冊。
乙一の『暗黒童話』です。
名前からして陰鬱な雰囲気が漂っていますね。内容も相応に暗澹としています。


暗黒童話ある事故により片目の眼球を失った少女。
臓器移植により視力を取り戻したものの、
そのショックから記憶障害になり、
過去の自分を思い出せなくなってしまいます。
ところがある日を境に、移植された左目の
視てきた映像がデジャブのごとく再生されます。
そして少女はその記憶を頼りにドナーの住んで
いた町を目指します。

その先に凄惨な事件が待ち受けていることも
知らずに……。



稚拙なあらすじですがご容赦ください。
話が進んで行くにつれだんだんとホラーサスペンスの様相を呈してくる本作。
じわじわとくる恐ろしさが不快であり、快感でもあります。


この物語の季節は冬。
寒々しい情景描写に目が行きがちですが、それと対比されるように描かれる喫茶店のカフェオレの温かさだとか、そういった描写がリアリティをもたらします。
きっと誰もが体験したであろう冬の描写にぐっときます。
ただ、描写が精細であるが故に、ショッキングなシーンも多くあるので、苦手な方は読むのを控えた方がいいかなと思います。


本書の作者である乙一は独特な視点や設定で描いた作品が多くあります。
例えば『夏と花火と私の死体』では殺人事件の被害者、すなわち死体の目線で事件が語られていきます。
視点が変わることで生まれる緊迫感は彼にしか生み出せないものでしょう。
『夏と花火と私の死体』は残念ながら本館に所蔵されていませんが、文庫版も発売されており、非常にお手頃なお値段となっておりますので、ぜひお近くの書店へ足をお運びください。
短編集である『ZOO』なんかもいろんなテイストの作品が楽しめておすすめです。


気がつけば今年も残りわずかとなりました。
年末年始はおこたにこもって、普段読まない本を読んでみるのもまた一興かもしれません。
私は現在10冊ぐらい積読しているので(2ヶ月後のゼミ合宿と3ヶ月後の卒中からは目を背けつつ)
一気に読み切りたいなと思います。

『おまえ うまそうだな』 

みなさんこんにちは!
寒さも日に日に厳しくなってくる今日この頃です。
今年は「平成最後の○○」というフレーズが飛び交っていましたが、いよいよ平成最後の冬を迎えます。
冬の寒さが迫る中、今年も残すところ1ヶ月余りとなりました…。

さて、今回私が紹介する本は、
『おまえ うまそうだな』 宮西達也 作絵
という絵本です。

おまえうまそうだな


アンキロサウルスの赤ちゃんがひとりぼっちで歩いていると、
恐ろしいティラノサウルスが…。
「ウマソウ」。ある勘違いからアンキロサウルスの赤ちゃんはティラノサウスルを本当のお父さんのように慕うようになります。
しかし、アンキロサウルスとティラノサウルスでは異なることばかりです。
それに気づくティラノサウルスと無邪気なアンキロサウルスの赤ちゃん。
この2匹は一体どうなってしまうのでしょうか?

ほっこりするけれどもどこか寂しさが残る絵本です。
ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?
(アルバイトS)